学名: Cochlearius cochlearius
上画像:clicque(翻案)
ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)とは
サギの仲間にしては珍しくペリカンのような平らなくちばしを持つ鳥です、
厳密にいえばサギ自体がペリカンの仲間(ペリカン目)ですが。


サギと言えば優雅ですらっとしたイメージがありますがヒロハシサギ(Boat-billed Heron)はずんぐりしていて可愛らしい雰囲気です。

ヒロハシサギの分布と特徴(Distribution and Identification of the Boat-billed Heron)

分布(Distribution)
- 中南米(Central and South America)
- メキシコ(Mexico) λ=-100 から
- ブラジル(Brazil) λ=-50 辺りまで。
- 標高800m以下の中南米の湿地に生息している。
特徴(Identification)
- ゴイサギのように夜行性でゴイサギ属(Nycticorax)に近いとも言われていますが、遺伝学的なデータで裏打ちされているわけではない。
- Skeletal characters(骨格形質? / 骨格特性?)の解析ではサンカノゴイ属(Botaurus)やヨシゴイ属(Ixobrychus)により近い事が示唆されている。

ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)の瞳

最初の写真(zorek)は羽の色が茶色い幼鳥です。
おもちゃを前にして目を輝かせる少年のようなまなざしです。
次の写真(rose362)の成鳥はとっても穏やかな表情です。
やさしさに満ち溢れているようです。

ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)はとっても優しい表情をしています、
見る角度によっては。
ですが正面のやや上側から見ると表情が激変します。
それがこちら。

見るからに極悪人の目をしています。

まさに詐欺師のようです。
In Japanese, the pronunciation of heron is “Sagi,” which also means fraud/swindler.

This bird gives off that exact impression.

とても同じ鳥とは思えませんが、
きっと外観から性格を憶測しようとする人類の試みが間違っているのでしょう。

ヒロハシサギの髪型 (Boat-billed Heron’s Hairstyle)
ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)はアジアで見かける冴えないおじさんのような髪型をしています。

ですが本気を出すとすごいんです。
巣作りの季節が近づくと髪がだいぶ長くなります。
アジアのおじさん?

ブラジルのサンバ?

そして
スーパーサイヤ人?

この特徴的な髪型(冠羽/Crest)は求愛行動に使われますが、オスメスによる違いはさほどなく、若干オスの方が長い程度です。
冠羽以外でもオスメスによる違いはあまりないですが、つがいの場合は若干体が大きい方がオスであることが多いようです。

ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)の冠羽(Crest)は巣作り前頃が一番立派だそうです。
上写真の左側の個体のように冠羽(Crest)を誇示するようなポーズをクレストレイジング(Crest Raising)と言います。
写真では求愛ディスプレイ(Courtship display)としてクレストレイジング(Crest Raisingをしていますが威嚇でクレストレイジング(Crest Raising)をする事もあります。


頭の筋肉はどうなっているのでしょうか?
ヒロハシサギのディスプレイ(Boat-billed Herons Display)
ヒロハシサギでは求愛ディスプレイ(courtship display)と威嚇ディスプレイ(Threat display / Agonistic display)が同じである事が多いです。
営巣地に集まった頃にはすでにペアになっているのが一般的で、他のサギと比べると営巣地での求愛ディスプレイ(courtship display)はそれほど多くないようです。
【クレストレイジング(Crest Raising)】
前の写真にも出てきた冠羽(Crest)を誇示するようなポーズ。
クレストレイジング(Crest Raising)は求愛ディスプレイ(courtship display)の他にも、挨拶や威嚇として使われます。

【ウィングス アウト ディスプレイ(Wings Out display)】
両翼を広げるポーズで空から降りてきた直後などに見せる事が多い。


【トール ロッキング(Tall Rocking)】
冠羽を立てて首を伸ばし、体をゆっくりと横に揺らす。
威嚇的な行動です。
次の写真はトール ロッキング(Tall Rocking)に近い体勢ですが、トール ロッキング(Tall Rocking)ではないと思われます。

【ポップ ディスプレイ(Pop Display)】
声で鳴くのではなくくちばしを鳴らした音(“Pop”と聞こえるそうです)をだす。
くちばしを鳴らす事をクラッタリング(Clattering)と言います。
くちばしを鳴らすのは求愛の他に威嚇、特に縄張りに近づいた敵に対する威嚇としても使われます。
この時には次のような作法があります。
●ポップ ディスプレイ(Pop Display)の作法
- 足を軽く曲げる。
- あごを引きくちばしを下げ冠羽を見せる。
- 尻を下げて体を直立させる。
- 冠羽を半分立てる。
- 翼の外側を広げる。
- そしてくちばしを鳴らす。
【フォワード ディスプレイ /シングル クラップ ディスプレイ(Forward Display or Single Clap Display)】
こちらに向かって歩き出し、首を高く前方に伸ばし、冠羽を立てた状態でくちばしを鳴らす。
クジャクなどの気の強い鳥が人間に向かって威嚇するような感じでしょうか。
【小枝揺らし(Twig Shaking)】
小枝をくわえて振り回す行動です。人間に例えるなら剣やサーベルを振り回すイメージで主に威嚇ディスプレイですが求愛ディスプレイでも使われます。
「道具を使うのは人間だけ」なんて話は勘違いの昔話で野鳥も結構道具を使います。人間が与えたパン切れをサギが食べずに「魚釣りの餌」として使う事がニュースになった事がありましたが、決して特別な行動ではありません。サギが死んだ昆虫や小枝などを水に浮かべて獲物(魚)を待つ事はよくある事です、この行動はベイティング(Baiting/餌付け)と呼ばれます。
小枝揺らし(Twig Shaking):小枝を揺らすのか?小枝のように揺れるのか?
生物の生態で小枝揺らし(Twig Shaking)と呼ばれている行動には2種類あります。
- 上記の小枝をくわえて振り回す行動 = 小枝を揺らす行動。
- 小枝に擬態したナナフシ(昆虫)などが風に揺られるような動き動きをする事 = 小枝のように揺れる行動。
サギでもヨシゴイ(Bittern)等はヨシの枝(茎)に擬態して風に揺られるような動き(小枝のように揺れる行動)をしますが、サギの場合はこの動きを小枝揺らし(Twig Shaking)ではなくスウェイイング(Swaying)と呼びます、ややこしい!
ヨシゴイの仲間のアメリカサンカノゴイ(American Bittern / Botaurus lentiginosus)


ヨシゴイのスウェイイング(Swaying of a Bittern)
↑ 52秒から開始 → 1:11の早送り前まで見れば十分だと思います。
↑ こっちの方が面白いかな
ヒロハシサギを含めたサギのディスプレイはかなり細分化され数多く知られていますが細かくなりすぎるのであとは割愛します。
ちなみにヒロハシサギの繁殖期は雨季であることが多いですが、沿岸部では乾季の場合もあります。
ヒロハシサギの動画と鳴き声(Video and Call of Boat-billed Heron)
周囲に聞こえるアヒルのような鳴き声もヒロハシサギ(Boat-billed Heron)のものと思われます。
下のグラフをクリック/タップすると鳴き声が聞けます。
ヒロハシサギの亜種(Subspecies of Boat-billed Heron)
亜種分布域(Subspecies Distribution)
- 大きく分けて2つのグループがある(2つの種に分類される可能性も有る)
- 5つの亜種があり大きさと色が異なる。
- 北部に生息するzeledoniグループ
- Cochlearius cochlearius zeledoni
- メキシコ西海岸(シナロア州からゲレロ州まで)
- Cochlearius cochlearius phillipsi
- メキシコ東部(タマウリパス州南部からキンタナロー州)、ベリーズ、グアテマラ北部
- Cochlearius cochlearius ridgwayi
- メキシコ南部からコスタリカ西部
- Cochlearius cochlearius zeledoni
- 南部に生息するcochleariusグループ
- Cochlearius cochlearius panamensis
- コスタリカ東部、パナマ、コロンビア北西部のチョコ(Chocó)
- Cochlearius cochlearius cochlearius
- パナマ東部からギアナ、アマゾン、ペルー、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチン辺り
- Cochlearius cochlearius panamensis
※次の地図は私が適当に色分けしたものであり不正確です。

北部に生息するzeledoniグループ
Cochlearius cochlearius zeledoni

- 中間色
Cochlearius cochlearius phillipsi

- 中間色
- 最大亜種
丸い写真は撮影地を元に亜種を推定していますが、間違っている可能性も有ります。
分布域以外での大雑把な分類
- 首から胸までの色が純白:cochlearius
- 色が濃い:panamensis
- その他中間色の3亜種の大きさ
- 大:phillipsi
- 中:Ridgwayi
- 小:zeledoni
南部に生息するcochleariusグループ
Cochlearius cochlearius ridgwayi

- 中間色
Cochlearius cochlearius panamensis

- 色が最も濃い
Cochlearius cochlearius cochlearius

- 色が最も薄く首から胸までの色が純白
- 幼鳥はどの亜種も茶色いですが、意外にも成鳥が最も白いcochleariusが幼鳥の羽色はより暗い茶色です。
- 下の写真はペルー西側のイキトス付近(アマゾン)で撮影されたcochleariusと思われる幼鳥です。右側の口を開けた子が良い表情をしています!

ヒロハシサギの捕食と食べ物(Boat-billed Heron Foraging & Diet)

ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)は大きなくちばしを使って水を救い上げるようにして餌を捕まえる事ができます。
でもそれだけではなく、他のサギと同様に魚をくちばしで突き刺して捕らえる事もできるそうです。(ですがこの口でうまく刺さるのでしょうか?)
昆虫や魚から小型哺乳類まで、様々なものを食べます。
エビなどの甲殻類も重要な食材でクルマエビ属(Penaeus属)も大好物のようです。

ヒロハシサギは飼える?(Keeping a Boat-billed Heron as a Pet?)

ヒロハシサギ(Boat-billed Heron)はペットとして流通する事もあり、飼う事もできるようです。お値段は数十万円!
ですがヒロハシサギのような野生動物を家族に迎えるには非常に高いハードルがあります。
本当に飼いたい方は下記を考慮した方がいいかもしれません(私は飼ったことがありませんが)。
- 野生での寿命は6~7年ですが飼育下での寿命はその2倍くらいと思われます。
- 大きくなる(50㎝)
- 餌の確保が大変。
- オウムのような果食性ではなく魚や小動物を食べます。
- 魚食性だと更なる問題も発生します!
- 一般的にサギのような魚を食べる鳥はフンがとても臭いです!生活環境に影響を及ぼすほどの「激臭」への対策は、想像以上に困難です。
- 熱帯低地の野鳥である事
- 日本では冬は室内での温度管理が必須となります。ですが上記の「臭い」の問題があるなかで、密閉された室内で共に暮らすことが現実的かどうか、慎重に考えたほうがいいかと思います。
- 他のサギと異なり、繁殖期には巣や子供を守る為に、かなり攻撃的になる事が知られています。
- 他の鳥と比べて臆病だとも言われていますが、攻撃的な一面もある事を理解しましょう。

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